以前から気になっていたある疑問というか、「行き過ぎた政治的配慮」に対する原因の調査とその回答が載っている、そんな著作です。
「はじめに」と題して、本書は「3つのエセ真理」に言及する。その3つとは
- 脆弱性のエセ真理:困難な経験は人を弱くする
- 感情的決めつけのエセ真理:常に自分の感情を信じよ
- 味方か敵かのエセ真理:人生は善人と悪人との闘いである。
とあります。
そして、アメリカの大学において、暴力を伴う妨害行為が起こったり、教員の言葉尻を捉えての糾弾、教授や学長を軟禁し暴言を浴びせる等の異常事態の事例を挙げていく。
ここらへんに関して言及した映画で、「アフター・ザ・ハント」という作品があり、その感想の中で本書を紹介したので、この記事はその映画の感想記事と相補的な関係にあります。
で、結論というか、要点は「文明の発展によって、人々が安心・安全・快適・便利を追い求めた結果、人間が劣化した」ところにある。
「ストレス」って、外部からの刺激の総称だけど、適度にさらされることで人は強くなっていく。本書ではピーナッツアレルギーのエピソードに象徴させている。人には危険が必要というか、当たり前過ぎるんだけど、人間は生き物で体がある(身体性)。
「ヘリコプターペアレント」みたいに、親の過保護によって甘やかされた世代が、外部からの刺激に「適度に」さらされずに育った結果、心身ともに弱くなり認知を歪ませたので神経症みたいな反応が至る所で吹き上がって来ている訳だ。
ネットの影響がそれに拍車をかけ、認知の歪みをさらに助長させると、ドラマ「アドレセンス」みたいに13歳の少年が同い年の少女を殺害してしまう結果になったりする。
本書では解決策も示されていて、つまりエセ真理の真逆を行えばいい。
- かわいい子には旅をさせ、人生の厳しさを体験させよ(起源不明だが、古来からの知恵)。
- 油断すると、自らの思考が最大の敵以上の害となる。しかし、ひとたび思考を支配できるようになれば、その恩恵は計り知れず、父母の助けよりも大きなものになる(ブッダ)
- 善と悪を分け隔てる境界線は、すべて人間の中にある(ソルジェニーツィン)
なんてことはない、古代の知恵に耳を傾ければいいのだと。
問題は、この「正しさ」が通るのかということ。みんな自分の見たい世界しか見たくなくなっているこの世の中で、果たしてどれだけの人が古代の知恵に耳を傾けたり、そもそも本書を手に取って読んでくれるのか、それが問題ですね。
