※この記事はネタバレありです!
私が信を置いている映画人が褒めていたので、それだけしか情報を入れずに見に行きました。なんかドラマ版があるらしいですが、未見です。

視聴後の感想としては、「死」の擬人化でしたね。
何人かのエピソードが交互に描かれるのですが、列挙してみますと
・機能不全家族を両親に持ち、受験を控えている女子高生「北川裕理(中島セナ)」
・飲酒運転時に自動車事故で人を轢いてしまい、妻に逃げられ断酒に努める運送会社勤務の男「倉本(松田龍平)」
・ショッピングモールの清掃員「崎山(内田慈)」
・理容院に努める、前の職場で女性に暴行した過去のある「皆川(藤原季節)」
・親の後を継いだはいいが、その旅館が多額の負債を抱え、そのストレスの為に大麻に溺れている「岸(シソンヌのじろう)」
になり、このエピソードが代わる代わる描かれて普通は一点に収束していくのかと思いきや、あらぬ方向に行きます。
上記の人達だけど、作中で嫌な死に方をします。共通点としては、「ある男(香川照之)」に会った後にみんな死んでいる。
で、それと彼らの死体の髪が、何か人為的に刈り取られているのに気付いた刑事の「堂本(中村アン)」が事件の匂いを嗅ぎつけて捜査をしているんだけど、堂本は観客の目線であり、彼らの死に何か原因と言うより意味があるのだろうと刑事の感を働かせたが故に行動する。
でも、最初に死んでいった安達祐実演じる名前の無い女性の夫が、「妻が死んだのは事故や天災と同じだと思っています」という様に、意味なんかなかったりする。堂本の思い込みというか、「そうあって欲しい」という願望でしかなかった訳だ。
要するに、「死なんてものはある日突然前触れもなく訪れる」というのがテーマなんだけど、私にはひどく凡庸に感じられました。エンタメの強度から言えば、同じテーマを扱った「ファイナル・デッド・ブラッド」の方が強かったし、何よりレギュラーで出演していた俳優のトニー・トッドさんがお亡くなりになったことが図らずも作品の格を一段高く上げていたりします。
複数のエピソードが一点に収束していく上手さなら、「Weapons」の方が巧みでしたし
香川照之さんの演技が上手いのは認めます。明るい爽やかインストラクターを演じたかと思えば、暗く陰鬱な大麻の調達係とか、誠実な塾の講師とか、演技の幅が広い。ですが、いかんせんダークホラーコメディにしか見えなくて、期待していたのに肩透かしを食らった印象しか残りませんでしたね。
面白かったというか、私がコメディ味を感じたシーンがふたつあって、ひとつは最初に食堂で店員の安達祐実にお金を渡して「ある男」がお釣りを受け取るんですけど、その金額が250円で、終盤にガソリンスタンドの店員として出てきた「ある男」が、今度は250円を渡す。一応これで物語の円環を閉じるみたいな効果があるんでしょうけど、ちょっと吹き出しましたね。
もうひとつは、最後も最後、牧場に現れた「ある男」。もちろんそいつに出会ってしまった牧場で働いている名前の無いキャラ(井之脇海)は、この後意味の無い死を遂げるんでしょうけど、「ある男」が文字通りポスターにある様に我々観客を「けむに巻く」のがメタ的かなと思ったり。