映画『ジョニーは戦場に行った』感想|五感を失い「人豚」として生かされる、安楽死さえ許されぬ戦場の真実(ネタバレありです!)

 ※この記事はネタバレありです! 

「ジョニーは戦場に行った」とは?

 元はダルトン・トランボの反戦小説ですが、ダルトン・トランボ本人がベトナム戦争中の1971年に監督・脚本で映画化。原題は「Johnny Got His Gun」

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 ↓元となる原作小説。

 

 ロッテントマトスコアは、批評家の評価が低い。あまりにも残酷過ぎるから?

www.rottentomatoes.com

ジョニーのプロフィールと時代背景、ジョニーの現状認識

 内容は、第二次世界大戦に志願兵として出征した主人公のジョーこと「ジョニー(ティモシー・ボトムズ)」が戦争中に爆弾により大けがを負い、両手両足目鼻口耳を失い脳にも損傷を受けてしまう。

 

 軍医のティラリー(エドワード・フランツ)は、負傷兵のよきサンプルとしてジョニーを「407号」と呼称し(人のモノ化)ジョニーを生かす。

 

 最初ジョニーは自分の置かれた状況を理解出来ずに混乱するが、中盤近くとうとう彼は理解してしまう。それまで彼は夢を見るというか、彼が戦場に行く前や少年期の思い出が描写され、彼のプロフィールが明かされ、当時どこにでもいる普通の青年であることがわかってくる。

 

哀しい性処理

 話が進行して来るとジョニーの体力も回復して来るので(1年以上経過している)、若い彼は性的な妄想をし始める。性欲が戻って来る訳だ。

 

 ジョニーの状態を見て気の毒に思った看護婦が、はっきりとは写さないけど性処理をしてくれる。ガラスの花瓶に花を生けるという、象徴表現というより上品な演出なので分かりにくいけど。

 

生きるために必要な「夢を見ること」と、現状打破の可能性への気づき

 ジョニーの夢や妄想には、キリストっぽい人物も出て来て彼にアドバイスしたりする。ここらへんちょっとコミカルな感じがするけど、人が生きて行くためには妄想というかある種のファンタジーが必要であるのがわかる。自分がこんな状況に置かれたら、私もそうぜずにはいられないでしょうからね。

 

 性処理してくれた看護婦さんが、ジョニーの胸に水で文字を書いて「メリークリスマス」と、いつなのかを教えてくれたことがヒントになったのか、ジョニーはモールス信号で意思疎通を図ろうとする。

 

死ねないという地獄。中国の刑罰「人豚」と同じ。

 そして迎えるクライマックス。モールス信号で意思の疎通をし、ティラリー軍医に「SOS」と助けを呼ぶ。「僕を外に出してくれ!そして僕を見せ物としてみんなに見せくれ!さもなければ僕を殺してくれ!」と。

 

 だがティラリー軍医は「何もするな、外にも出すな。寿命が来るまで生かせ」と命令する。

 

 それは何故か?もちろんサンプルとして生かすという目的もあるけど、戦勝国であるアメリカの兵士の惨状を知られたくないという体面の為。当時ナチスドイツというわかりやすい「悪役」がいて、それに勝利した自分たちは「正義」であるという「フィクション」に泥を塗られると感じたのでしょう。

 

 看護婦がこっそりと彼を安楽死させてあげようとするけど、それも阻止されてジョニーは言ってしまうと中国における「人豚」みたいに生かされ続けるという地獄を味あわされて物語は終わる。Wikiを漁ると、漢の高祖劉邦の妻呂雉が行ったとされているあの惨たらしい拷問を。

ja.wikipedia.org

 

若松孝二監督の映画「キャタピラー」との比較

 以前感想を書いた若松孝二監督の映画「キャタピラー」もえぐかったですが、本作はその状況を上回る地獄です。キャタピラーでは自死することで解放されていますからね…

entanglement26.hateblo.jp

 

現実世界では地獄がまた始まっている

 タイミングがいいんだか悪いんだかわかりませんが、イスラエルがイランを攻撃し、どうやらイランのハメネイ師は死亡したらしいですね。

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 国家って、多くの人をまとめ上げる為に作り上げられた「フィクション」で、その国家同士が行う外交手段のひとつが戦争なんだけど、だからこそそんなことに巻き込まれれるのは馬鹿らしいし、巻き込まれたら最悪こうなるんですよと、明確な反戦のメッセージと被害にあった似たような境遇にある人たちへの鎮魂でもある本作ですが、今現在こういう「正しさ」って「つまらない」としてほとんど耳を傾けてもらえないのが現状なんでしょうね。とても残念なことではありますが、日本にいるみなさんはこれから勇ましい発言をする政治家をちゃんと見た方がいいですよ。そういう奴って決して戦場に行きませんからね!