※この記事はネタバレ満載です!
アメリカ社会の歪みや権力を誇張して風刺し続けてきた『ザ・ボーイズ』がついに最終回を迎えました。

全世界が熱狂した極悪非道ヒーローVS人間のドラマシリーズ『ザ・ボーイズ』。ついに最終回を迎えます。
ファイナルシーズン(シーズン5)は、全体として「在庫一掃セール」のような忙しない展開が目立ち、週刊少年ジャンプの打ち切り漫画のような終わり方だったという印象は否めません。それでも、シリーズを通じて積み重ねてきたテーマに一定の決着をつけた点は評価できます。
ファイナルシーズンの光と影
良かった点として特に挙げたいのは、Aトレインの改心とその決着です。シーズンを通じて彼だけが劣化していた状態からキャラクターとして成長し、深みを見せた存在でした。
一方、ファイアクラッカー等の他のキャラクターは「可哀想だった」という印象が強く、もっと掘り下げて欲しかったというのが正直なところです。二代目ブラック・ノワールが特に目立たないで退場したのは、アメリカでの黒人がマイノリティであることを象徴させてはいるのでしょうが。
シスター・セージのキャラクター造形は上手く行ったとは思えませんでした。「知能が非常に高い」のと「賢い」のは違うんですよ。
ボーイズ側だけど、エピソード7ではついにフレンチーが犠牲になりました。でも、ここまでよく生き残ってきたものだと感心します。
自信の無さを感じてしまうアクションシーン
アクションシーンについては賛否が分かれるでしょう。特に気になったのは以下の点です。
・ディープが二代目ブラック・ノワールを殺す場面
・ソルジャー・ボーイとボムサイトの格闘
・ホームランダーがソルジャー・ボーイを背後から首絞めで気絶させるシーン
後者は特に不自然で、ソルジャー・ボーイ本人がボムサイトに対して同じ首絞めを仕掛けていただけに「その手は食わないだろう」と思ってしまいました。
また、細かいカット割りで繋いでいるようにも見え、シリーズ後半のアクションへの自信のなさが垣間見えた気がします。
現実とフィクションの境界
これまでアメリカをグロく風刺をしていた本作ですが、現実世界のグロさが完全にそれを上回ってしまい、何を描写しても現実に追い越されてしまう現象が起きてしまった。
制作陣もそれを自覚していたのか、第5話では「早く走れるヒーローにセレブが殺される」という非常にメタな自虐ネタを披露していました。
また、ホームランダーが自身をキリストの後継者として神格化するプロパガンダ映像のくだりは、2年前に撮影が完了していたにもかかわらず、現実の出来事(トランプ氏のAI生成画像投稿)と重なって大きな話題になりました。フィクションが現実を先取りしすぎた結果、制作陣自身が「追い越された」と感じていた部分もあるのかもしれません。
最終回の決着について
ホームランダーの最期は、独裁者としての横暴を極めた彼にとって、あまりにもシンプルすぎたように感じました。彼はまさに現代の権威主義や「強い男(に見える存在)」像の象徴だっただけに、もう少しメタ的で象徴的な締めくくりが欲しかったというのが個人的な感想です。
ハーヴェイ・ワインスタインに代表される、男性の権力者がやりがちな性加害と海洋エコロジーに対する若干冷笑的なキャラクターであるディープの最期は自業自得の典型で、ある意味彼らしい終わり方でした(シュモクザメの声がサミュエル・L・ジャクソンであることへの皮肉(映画「ディープ・ブルー」オマージュ!)も、気づいた人には刺さるでしょう)。ちなみに、「シュモクザメ」と検索すると「シュモクザメの声がサミュエル・l・ジャクソン」て表示されますw
彼というキャラクターが、徹底的に惨めに描かれる理由ですが、これは性加害者なんて大したことない奴なのだと、被害に遭った人達をある種ケアする効果を見込んでのことだと、今更ながら気が付きましたね。
改めて、「ザ・ボーイズ」というタイトルの意味
最終的にブッチャーもヒューイによって倒される流れは、シリーズタイトル「ザ・ボーイズ」が象徴する「有害な男性性」を、作品が真正面から清算しようとした結果だと解釈できます。ホームランダーと鏡像関係にあったブッチャーが退場することで、ようやく彼の「解放」が描かれたと言えるでしょう。その前に飼い犬である「テラー(恐怖)」の死亡(実際にテラー役の犬は撮影後寿命を迎えた)はそれを強調している。
ドラマは終わりましたが、この作品が問い続けた「スーパーヒーローとは何か」「権力とは何か」というテーマは、現実世界ではこれからも続いていくでしょう。
ロッテントマトスコアは現時点で批評家97%、ポップコーンメーターは65%と批評家と一般の視聴者との間で乖離がありますね。
制作に関わったエリック・クリプキをはじめとするスタッフの皆さん、そして5シーズンにわたってこの狂った世界を一緒に観てきた視聴者の皆さん、本当にありがとうございました。お疲れ様でした。
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