ちりあくたのつぶやき

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映画『ひつじ探偵団』感想・考察|出オチじゃない!「反芻」する羊たちが人間の欲を暴く本格ミステリー【ネタバレあり】

 ※この記事はネタバレありです!

 

 レオニー・スヴァンの同名小説の映画化。タイトル通りひつじが探偵となって事件を捜査すると聞くと出オチみたいなコメディなのかなと思われるかも知れませんが、非常に手堅く作られたミステリーとなっております。

監督:カイル・バルダ(「ミニオンズ」)

原作:レオニー・スヴァン(「ひつじ探偵団」)

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 大まかな内容は、聖書にあるキリストに関する話をベースとして「火曜サスペンス劇場(通称火サス)」のような王道感のあるミステリーです。

あらすじは王道のミステリー

 イギリスののどかな田舎町で、羊飼いのジョージが死体となって発見される。警察は“不運な事故”で早々に片付けようとするが、ジョージの被養育者たちはそれに反発、最も賢いリーダーのリリーを中心に結束して調査を始める。実はジョージは被養育者たちに毎晩探偵小説を読み聞かせており、彼らはその内容を理解していた。彼らは愛するご主人様の無念を晴らすべく、犯人捜しに奔走する。

本作最大のキモ、ひつじが事件を捜索!

 まあこのリリー達が羊であることが本作最大のキモですね。もちろん、この羊たちは演技指導されたわけではなく、CGなんだけど、かなりの手間がかかっているそうな。

現代の特撮技術だから可能になった、ひつじ達の造形

 リスクリーンに映るひつじたちは、CGであることを忘れるほどに生々しい。ふんわりとした毛並みに透過する陽光、そして何より、人間の言葉を喋らせるのではなく『ひつじの鳴き声』の動きのまま感情を表現したリップシンクの職人技に脱帽します。

 

 羊同士の会話で、「3秒経てば前のことを忘れる」みたいなのはどうも偏見らしく、本当のひつじはそこそこ頭も記憶力もあるそうな。

ミステリー部分は本当に王道、だからこそ手堅い展開

 ミステリーの部分だけど、ヒュー・ジャックマン演じる飼い主のジョージがある日死体で発見されるも、いったん事故で済まされようとするところを、リリー達羊がそれを怪しみ独自の捜査を開始する。

 

 もちろん彼らは羊なので、自分たちではどうしようもないから、人間に捜査するように仕向けたり、手がかりに気付かされたりしてサポートする。ティム・デリー巡査(ニコラス・ブラウン)がサブプロットになっていて、彼が何も起こらない田舎町で腐っているところに殺人事件が舞い込んでいささか興奮気味なのは笑う。

 

 もうひとつのサブプロットが、ジョージの娘レベッカ・ハムステッド(モリー・ゴードン)で、彼女は事件の被害者遺族でもあり容疑者でもある。

 

 このミステリー部分はかなりオーソドックスなもので、それまでに出て来た登場人物のほとんどに動機があり、ジョージには実は莫大な遺産があることでレベッカに疑惑の目が向けられ、登場人物も観客もミスリードされる。

 

 終盤に意外な人物が犯人であると判明し、リリー達の陰ながらの協力によりティム巡査がそれを公の場で発表。無事に事件は解決され、レベッカの疑いも晴れ、彼女は莫大な遺産よりも大事なものを受け継いでエンド。

ひつじたちの視点から浮かび上がる寓意

 本作は王道ミステリー(火サスやクリスティ的)でありながら、動物の目で人間社会の強欲さを炙り出す「寓話」の側面を持っています。「人間の欲(遺産争い)を、純粋なひつじたちが観察する。そう、本作の本当の魅力はリリー達の存在感にある。リリー達ひつじの挙動とリリーの成長(成長するんですよ!)を見るのがとても楽しいです。

楽しいひつじたち

 まずリリーですが、最初自分が羊達のなかでいちばん頭がいいと思っていたのだけれど、実はそうではないことがわかり、大事な仲間を途中失い不可逆に傷つき現実や自分自身に対する認識が変容する。そして「殻を破る(このままでは事件を解決できないのではないかという思い込み)」為に「反転攻勢(もう一度事件を、羊という反芻動物ならではの「反芻」によって振り返り、再度事件解決に向けて行動する)」する。

 

 「冬の子羊」として、他の羊たちからのけ者にされているセバスチャン。そして同じく文字通り冬の子羊という「名前の無い存在」が出て来て、その子は最後名前という「自己の尊厳」を獲得する。実は本当に賢いモップルや、いつもせわしないゾラ(もしかして、ADHDのレプリゼンテーションかな?)、逃亡する犯人を最後に留める役回りのロニー&レジー等、本当に愛おしく感じます。

コメディを楽しんで演じている人間側の俳優たち

 人間側の俳優たちも素晴らしく、このコメディを心底楽しんでいる感じがしました。なかでもリリー達からしたら恐怖の対象でしかない肉屋の親父ハム・ギルヤード(コンリース・ヒル)とジョージと同じ羊飼いケイレブ・メロウ(トシン・コール)が結託してある計画が判明するのは、基本コメディである本作のホラー要素として楽しめましたね。

 

 お話の内容そのものよりも、その結末までのプロセスを楽しむ種類の映画でした。

 

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