ちりあくたのつぶやき

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タコ=たこ焼きの常識が変わる!映画『オクトパスの神秘: 海の賢者は語る』が描く、涙なしには見られない「1年限りの純愛」

 ※この記事はネタバレありです!

 

2020年公開
監督:ピッパ・エアリック、ジェームズ・リード
脚本:ピッパ・エアリック、ジェームズ・リード

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 私の中でのタコといえば、正直「たこ焼き」と、古の横スクロールシューティングゲーム『ダライアス』のボスキャラくらいのイメージしかありませんでした。そんな私がこの映画を観て、タコに対する認識を180度ひっくり返されることになりました。

 

燃え尽きた監督が「異界」へ足を踏み入れるまで


 本作は、ドキュメンタリー監督のクレイグ・フォスターが、心身ともに燃え尽きているところから始まります。冒頭でさらりと紹介される18年前のカラハリ砂漠の部族を追った作品が、実は重要な伏線となります。

 

 「ドキュメンタリーに脚本家?」と疑問に思う人もいるかもしれません。しかし、ドキュメンタリーとは膨大な現実の素材を編集で1本の「物語」に再構築するもの。緻密な構成設計が不可欠です。だからこそ本作は、ただの自然記録ではなく、極上のドラマとして成立しています。

 

 クレイグは仕事を忘れるため故郷の海に潜り、ケルプ(海藻)の森という水中の世界に足を踏み入れます。これはまさに、西洋物語における「日常を離れて異界へ入る」プロットそのものです。そこで彼は、一匹のメスのタコと出会います。

短すぎる生涯と、驚異の知能


 タコの生態は圧倒的です。周囲の環境に完全に溶け込む擬態能力、人間の顔を識別し、道具まで使いこなす下等霊長類並みの知能。そして、そんな高度な知性を持ちながら、寿命はわずか1〜2年という残酷な事実。

 

 この映画は、彼女の「1年限りの儚い一生」を、約1時間半のドラマとして描き切ります。

「干渉」と「恋」の境界線


 クレイグは彼女に深く感情移入し、毎日カメラを回します。ある日、うっかりカメラを落として彼女を驚かせ、消息を絶たせてしまいます。そこで活きてくるのが冒頭の伏線——カラハリで学んだ「自然と一体化するトラッキング技術」です。

 

 彼は「タコの気持ちになって」海中を観察し、見事に彼女を見つけ出します。やがて彼女はサメに襲われ、腕を一本失う凄惨な場面に遭遇します。クレイグは助けたい衝動に駆られますが、「自然への干渉」を避け、ただ見守ることを選びます。

 

 その後も心配で眠れなくなる姿は、もはや人間に対する「恋」のそれに近い。しかし彼女は驚異の再生能力で腕を生やし、独自の戦略で狩りを行い、再びサメとの頭脳戦を繰り広げます。貝殻を全身にまとった完全防御から、サメの背中に乗り移る逆転劇。事実は本当に小説より奇なり、と思わず息を飲みました。

命の循環と、監督の変容


 1年後、彼女は交尾し、何万もの卵を産みつけます。そしてタコの宿命である「一回繁殖」の後、子孫を残して力尽きます。彼女の体は海の他の生き物に食べられ、大きな命のサイクルに還っていきました。クレイグはその1年をすぐ側で見届け、自身の自然観を根本から変えます。

 

 絶望から始まり、異界で「相棒」と出会い、試練を乗り越え、一回り大きくなって現実に戻ってくる——まさに「ヒーローズ・ジャーニー」の完璧な体現です。

観終わった後に残るもの


 この作品の背景には、舞台となったケルプの森を守る「シー・チェンジ・プロジェクト」があります。圧倒的な映像美とドラマチックな展開に魅了された観客は、自然とその保護活動に共感せざるを得ません。

 

 世界中のドキュメンタリー賞やアカデミー賞を総なめにしたのも、当然の結果と言えるでしょう。私のように「タコ=たこ焼き」だった人にも、強くおすすめしたい一本です。
観終わった後、海を見た目が変わる——そんな体験が待っています。

 

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