ちりあくたのつぶやき

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映画『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』感想・ネタバレ:『プレデター』と『ディノクライシス』のツギハギ? 豪華なオマージュが裏目に出た133分の苦行

 ※この記事は映画『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』のネタバレを含みます。

 

2026年公開
監督:ルーク・スパーク
原作・脚本:ルーク・スパーク、イーサン・ペッタス
主演:ライアン・クワンテン

youtu.be

 

「ベトナム戦争×恐竜」という最高にB級映画向きの題材

 「ベトナム戦争中の戦場に、突如恐竜が出現!」

 

 そんなストーリー紹介を見た瞬間、私は思いました。

 

 「これはいい意味でB級バカ映画の臭いがするぞ!」

ベトナム戦争と恐竜。

この二つを組み合わせるだけで、もう面白そうじゃありませんか。

密林を進む兵士たち。
突然聞こえてくる謎の咆哮。
銃撃戦の最中に姿を現すティラノサウルス。
逃げ惑う兵士たち。

 

 これはもう、劇場でポップコーンでも食べながら「うおおお!」と楽しむタイプの映画に違いない。

 

 そう期待して劇場へ足を運びました。

 

館内に入ると、私と似たような嗅覚を持つ好き者たちで席はびっしり。

上映館数が少なく、上映回数も少ないからか、席はびっしり埋まっていました。

 ところが――。

 

 完全に当てが外れました。

 

 結論から言えば、本作は私にとって、ひどく退屈で、悪い意味でツッコミどころ満載の作品でした。

 

 何より問題なのは、これだけ魅力的な素材を用意しておきながら、映画そのものに新鮮味がないことです。

133分は長すぎる!

 まず何より言いたい。

 

 上映時間133分は長すぎます。

 

 もちろん、長尺映画そのものが悪いわけではありません。

 

 本作は『ジュラシック・パーク』のような恐竜映画とは違い、ベトナム戦争という歴史的背景や、当時の軍事事情を描くことで差別化を図りたかったのでしょう。

 

 その意図自体は分かります。

 

 問題は、そのために費やした時間に対して、物語がほとんど前進しないことです。

 

 序盤は舞台説明と登場人物の紹介が延々と続きます。

 

 1960年代の情勢や軍事的な背景を丁寧に説明したかったのでしょうが、正直なところ、ここまで長々と説明する必要があったのか疑問です。

 

 ナレーションや冒頭のテロップで説明できる程度の情報に、かなりの時間を使っています。

 

 そして、その間に観客が期待しているのは何か。

恐竜です。

「ベトナム戦争の密林に恐竜が出る映画」を観に来た人間にとって、恐竜が出てくるまで延々と戦争映画を見せられるのは、なかなか厳しいものがあります。

最大の問題は「誰が主人公なのか分からない」こと

 そして、物語を決定的に退屈にしているのが、

「誰の物語なのか分からない」

という問題です。

 

 一応、小隊を率いるベイカー(ライアン・クワンテン)が主人公らしい立ち位置にいます。

 

 しかし、ベイカーについて「この人物を中心に物語を描きたい」という脚本上の意志があまり伝わってきません。

 

 観客が彼に感情移入するための描写も十分ではなく、

「この人がどうなるのか気になる」

という物語上の推進力が弱い。

 

 さらに、米軍小隊だけでもかなりの人数がいるのに、そこへベトコン、さらにその背後にいるソ連軍まで登場します。

 

 結果として視点があちこちに飛び、誰の物語なのかがますます分かりにくくなっていきます。

 

 本作が群像劇として徹底されているのなら、それでもいい。

 

 しかし実際には、群像劇として各キャラクターを十分に掘り下げるわけでもありません。

 

そのため、

「登場人物は多いのに、物語の中心人物がいない」

という妙な状態になっています。

『プレデター』を思わせるのに、新鮮味がない

 本作のストーリーを見ていて、どうしても思い出してしまうのが、あの名作です。

 

 そう、「プレデター」

「兵士たちが密林に入る」

「何か未知の存在が潜んでいる」

「兵士たちが次々と襲われる」

この構造は、どうしても『プレデター』を連想させます。

もちろん、

「兵士×密林×未知の脅威」

 という組み合わせ自体が『プレデター』の専売特許ではありません。

 

 こうしたお約束を利用することそのものは悪くない。

 

 問題は、そこから何を新しく見せるのかです。

 

 『プレデター』の場合、未知の敵が姿を見せないことによって恐怖を作り、兵士たちが一人ずつ追い詰められていくことで独特の緊張感を生み出していました。

 

 ところが本作では、

 

 「これ、次は『プレデター』っぽい展開になるんだろうな」

という既視感を超える仕掛けが弱い。

 

 せっかく「未知の脅威」を恐竜に置き換えたのに、その恐竜を使って新しいサバイバル映画を作るところまで届いていないのです。

そして恐竜の出現理由が『ディノクライシス』っぽい

 では、肝心の恐竜はなぜ現れたのでしょうか。

 

 その理由は、

粒子加速器によって古代から恐竜がやって来た

というもの。

 

 これを聞いたとき、私は別の作品を思い出しました。

 

 ゲームのディノクライシスです。

 

 もちろん細部まで同じというわけではありません。

 

しかし、

「科学技術によって時空が歪み、現代に恐竜が出現する」

という設定の根っこの部分を取り出してしまうと、どうしても既視感があります。

ここまで来ると、

 

 「本作は一体、何を新しく作ろうとしているんだ?」

という疑問が出てきます。

オマージュが「引用」ではなく「ツギハギ」に見えてしまう

 本作には、他作品を思わせる要素がいくつもあります。

 

 『プレデター』的な密林サバイバル。

 

 『ディノクライシス』的な恐竜出現の設定。

 

 そして、ブツブツと独り言を言いながら狙撃するスナイパー。

 

 これは言わずもがな、プライベート・ライアンを意識したキャラクターでしょう。

 

 こうしたオマージュ自体は、決して悪いものではありません。

むしろ、元ネタを知っている観客が「おっ!」と楽しめるような引用は、映画の魅力になります。

 

 しかし、本作の場合は少し違う。

 

 元ネタの要素を引用して、それを新しい文脈の中で再構築するというより、

「あの映画っぽい要素を入れよう」
「あのゲームっぽい設定も入れよう」

と、既存作品の記号を並べているように見えてしまうのです。

 

 その結果として完成したのが、

「見たことのある映画やゲームの要素をつなぎ合わせただけのツギハギ」

に見えてしまいました。

 

 これは非常にもったいない。

 

 なぜなら、素材そのものは最高だからです。

ベトナム戦争×恐竜。

これだけで十分に新しい映画を作れそうなのに、そこへ既視感のある要素を盛り込みすぎたことで、逆に「どこかで見たことのある映画」になってしまっています。

ソフィアのキャラクターも、脚本と噛み合っていない

 キャラクター造形にも首をかしげる部分があります。

 

 恐竜の解説役として登場する学者のソフィア(トリシア・ヘルファー)。

 

 彼女は夫の死を紛らわせるためなのか、モルヒネ中毒になっています。

 

 この設定そのものが悪いとは言いません。

 

 むしろ、彼女が喪失を抱え、それを恐竜との遭遇を通じて乗り越えていくのなら、キャラクターとしてかなり面白くなったはずです。

 

 ところが、本作ではその心理的な積み上げが十分ではありません。

 

 そして終盤になると――。

突然、二丁拳銃でバンバン撃ちまくる戦闘ヒーローになります。

いや、待ってくれ。

 

 さっきまでモルヒネでフラフラしていた人ですよね?

 

 もちろん映画なのだから、普段は戦えない人物が土壇場で覚醒する展開もありです。

 

 しかし、それならば、

「彼女がなぜ戦えるのか」
「何をきっかけに覚醒したのか」
「その行動が彼女の物語にどうつながるのか」

を積み上げておいてほしい。

 

 本作では、その部分が弱い。

 

 そのため、感動的な覚醒というより、

「クライマックスだから、この人にも派手なアクションをさせよう」

という脚本上の都合に見えてしまいます。

ボロディンも「敵役の出し方」がもったいない

 映画の元凶とも言えるソ連側の重要人物、ボロディンの扱いも気になります。

 

 途中から名前だけは出てくるのですが、実際に姿を現すのはかなり後。

 

 そして終盤に突然登場します。

 

 これでは観客にとって、

「この人を倒すことが物語のゴールだったの?」

となってしまいます。

 

 敵の親玉なら、序盤か中盤で一度くらい顔を見せておいてほしい。

 

 別に全部説明する必要はありません。

 

 意味深に登場させて、

「こいつは何か企んでいるな」

と思わせるだけでもいい。

 

 ところが本作では、名前だけを先に出しておいて、最後のほうになって急に本人が出てくる。

 

 しかも、

普通に英語を話すロシア人。

いや、そこはロシア語を喋らせて字幕を入れろよ!

……と思ってしまいました。

 

 細かい部分に見えるかもしれませんが、こういうところに映画世界への没入感を削ぐ要因があります。

「軍人VS恐竜」のドンパチはちゃんとある

 とはいえ、本作を擁護するなら、映画の主目的である、

「軍人と恐竜のドンパチ」

は一応ちゃんとあります。

 

 恐竜が出てきて、兵士たちが銃を撃つ。

恐竜が襲いかかる。

兵士が逃げる。

そしてまた撃つ。

観客がこの映画に期待しているのは、まさにこれでしょう。

 

 だからこそ、ここだけは一定のサービス精神があります。

 

 しかし、映画全体を133分かけて見る価値があるかと言われると、私は首をかしげてしまいます。

 

 本作の場合、「軍人VS恐竜」という最高に分かりやすい魅力を、余計な要素で薄めてしまっているように感じるのです。

そして私は、本気で退席しようと思った

 中盤近くでは、本気で退席しようかと思いました。

 

 とにかく眠い。

 

 私の隣に座っていたおっさんに至っては、実際に大きないびきをかいていました。

いや、分かる。

 

 私も眠かった。

「ベトナム戦争の密林で恐竜が暴れる」という映画を見に来ているのに、なんでこんなに眠いんだ。

恐竜映画なのに、恐竜より睡魔のほうが強敵でした。

 

……ちなみに私は最後まで寝ずに観ました。

偉い。

「新しい物語を作る」より「知っている映画を再現する」ことが先に立ってしまった

 結局、本作の最大の問題はここなのだと思います。

 

 『プレデター』のような密林サバイバル。

 

 『ディノクライシス』のような恐竜と科学技術。

 

 『プライベート・ライアン』を思わせる兵士たち。

 

 そして、戦争映画としてのリアリティ。

 

 制作陣が「大人向けの重厚な恐竜サバイバル映画」を作ろうとした意図は分かります。

しかし、その結果として、

「何を参考にしたか」は分かるのに、「この映画でしか描けないもの」が見えてこない。

ここが致命的でした。

 

 オマージュは、元ネタを知っている観客を喜ばせるためのものです。

 

 しかし、オマージュを積み重ねるだけでは、新しい物語にはなりません。

 

 本作を観終わって強く残ったのは、

「『プレデター』っぽいな」
「『ディノクライシス』っぽいな」
「『プライベート・ライアン』っぽいな」

という感想ばかり。

 

 「『プリミティヴ・ウォー』ならではの面白さは何だったんだ?」

と聞かれると、答えるのが難しい。

これが私にとって最大の問題でした。

映画より劇場の展示物のほうが面白かった

 今回、私はヒューマントラストシネマ渋谷で鑑賞しました。

 

 そして最後に、少し映画とは関係のない話を。

 

 というのも、今回の鑑賞では、

映画本編より劇場内の展示物のほうが圧倒的に面白かった

からです。

 

 まず、映画『GOOD BOY』のインディ君のぬいぐるみ。

Good Boyの健気なワンコです。 いやあ、かわいい。

 映画本編ではあんなに大変な目に遭っていたのに、こうしてぬいぐるみになっていると本当に癒やされます。

 

 そして、なぜか展示されていたおもちゃのM16。

 ポスターのティラノサウルスに向かって、

「これでぶっ放してえな……」

と、一瞬だけ思いました。

映画で溜まった鬱憤を晴らすかのように。 もちろん、おもちゃなので撃てません。

 そして極めつけ。

いちばん笑ってしまったのが、リバイバル上映中だった『ムカデ人間』の顔ハメパネル。

誰がここに顔をハメたがるねん(何故か関西弁)!

 ……いや、待て。

月ノ美兎ちゃん(有名なVtuber)ならやるかも知れない。

まとめ:題材は最高なのに、料理の仕方がもったいない

 『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』は、

「ベトナム戦争中の密林に恐竜が出現する」

という、これ以上ないほど魅力的な題材を持っています。

 

 だからこそ、非常にもったいない作品でした。

『プレデター』的な密林サバイバル。
『ディノクライシス』的な恐竜出現。
戦争映画としてのリアリティ。
そして軍人と恐竜のドンパチ。

 

 素材だけなら、いくらでも面白くできそうです。

 

 ところが実際には、133分という長い上映時間の中で主人公の軸が定まらず、登場人物が増え、既視感のある要素が積み重なり、キャラクターのドラマも十分に機能しない。

 

 その結果、

「豪華なオマージュ映画」ではなく、「既にどこかで見たものをつなぎ合わせた映画」

に見えてしまいました。

 

 B級映画として豪快に振り切ってくれれば、まだ楽しめたのかもしれません。

 

 しかし本作は、妙に重厚な戦争映画を目指しながら、その重厚さを支える物語が弱い。

だから長い。

そして眠い。

 

 133分は、あまりにも長い。

 

 せっかくの「恐竜×ベトナム戦争」という最高の組み合わせなのだから、もっと単純に、

「兵士たちが恐竜の巣に迷い込んでしまった! 撃て! 逃げろ! 食われるな!」

くらいに突っ走ってくれたほうが、私は楽しめたと思います。

 

 そんなわけで、私にとって本作は、

「面白そうな素材を、既視感のある映画のパーツで埋め尽くした結果、逆に新鮮味を失ってしまった133分」

でした。

 

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