※この記事はネタバレありです!
2001年公開(日本)
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
主演:ジェレミー・セオボルド

本作を鑑賞した理由は、新作『オデュッセイア』の公開に向けて、クリストファー・ノーラン監督の長編デビュー作を押さえておきたかったからです。
本作は古典的なフィルムノワールの形式を取っており、「愚かな男がファム・ファタール(運命の女)によって破滅していく」という王道のパターンを踏襲しています。
また、初期ノーラン作品の常連デヴィッド・ジュリアンによる音楽も秀逸で、特に他人の部屋へ侵入するシーンなどでビルの不安を煽るような不穏なテイストは、すでに非常に「ノーラン的」だと感じました。
※ビルの部屋のドアに「バットマン」のマークが貼られているのはその筋ではかなり有名らしく、後に「ダークナイト3部作」を担当することがまるで暗示されているかの様です。
「見る者が見られる者になる逆転構造」「時系列のシャッフル」「記憶や認識の混乱」「犯罪」「男の主人公」といった、現在のノーランを形作る要素はすべてここから始まっています。
特に、髪を切り髭を剃ったビルが登場するシーンでは「新しいキャラクターが出てきたか?」と錯覚させられる見事な叙述トリックになっており、外見の変化だけで時間軸と心理を描く手腕には唸らされました。
一方で、低予算(約6,000ドル)ゆえか、場面転換でいきなり画面が暗転して別のシーンに移るなど、カット割りはお世辞にもスムーズとは言えません。
「もっと上手く繋げられたのでは?」と感じる部分もあり、まだ習作といった段階の粗さも残っています。
ですが、のちの大作群へ繋がるアイデアが凝縮されており、天才監督の原点として非常に見応えのある一作でした。
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