ちりあくたのつぶやき

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【ネタバレあり】映画『カプトゥーラ -エル・チャポの逮捕-』レビュー:腐敗の暗雲を払う、現場警官たちの「光」

 ※この記事はネタバレありです!

 

2026年配信(Netflix)

邦題は「Caputre(捕まえる、写真に撮るの意)」

監督: チャバ・カルタス

主演: アルフォンソ・ヘレラ、ノエ・エルナンデス

Netflix公式プロモーション画像

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 日本国内でも7年前にニュースになっています。

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 メキシコの麻薬王、ホアキン・グスマン(通称エル・チャポ)の逮捕劇を描いた実録サスペンス。本作は、ジャーナリストのエクトル・デ・マウレオン(Héctor de Mauleón)が『El Universal』誌に寄稿した実録ルポルタージュ記事(“Cómo atrapamos al Chapo” および “Veinte minutos a solas con El Chapo”)を原作としている。

ja.wikipedia.org

 

精密に計算された主人公への「負荷」と推進力

 物語の冒頭、主人公の連邦警察官アルトゥーロ・カルモナ(アルフォンソ・ヘレラ)のプロフィールが示される。彼は過去に犯罪者との激しい銃撃戦を経験し、重い不眠症に悩まされている。この「未精算の過去」が彼のトラウマとして根底に横たわる。

 

 さらに家庭内では、妻から3人目の子供を授かったことを知らされる。ここでカルモナが「気を付けていなかったのか?」と漏らす一幕がある。避妊はパートナーへの配慮が基本とされる中で疑問を覚える発言だが、カトリック的価値観が色濃く残るメキシコ社会の現実か、あるいは突然の事態に対する動揺と不器用な責任転嫁の現れなのだろう。

 

 いずれにせよ、この3人目の妊娠によってカルモナには「経済的困窮」という課題が重なる。家計を助けるために夜勤へシフトを変更することで、「慣れていない職場環境への変化」と「夜勤による深刻な睡眠不足」が加わり、主人公は極限まで追い詰められていく。

 

 劇作術として見ても、主人公へ多重の負荷をかけることで物語の推進力を劇的に高める見事なセットアップだ。

 

 そこに組まされるのが、ベテラン警官のエクトル・ロサレス(ノエ・エルナンデス)だ。最初はどこか不穏で頼れるのか分からない雰囲気を醸し出し、相棒への疑惑という緊張感まで付与される。

「Facing El Chapo」――極限の心理戦とバディの法則

 そんな満身創痍のカルモナたちが直面するのが、海兵隊による大規模摘発(2016年1月8日の「ブラック・スワン作戦」)の混乱に乗じて逃走を図る、超大物麻薬王エル・チャポ(エクトル・コツィファキス)との遭遇だ(まさに原題『Facing El Chapo』の示す通りである)。

 

 ここから物語は一気に加速する。追われる側のカルモナにとっては絶望的な「逃走劇」となり、追うエル・チャポの配下たちにとっては「追跡劇」となって交錯する。

 

 中盤以降、身柄を確保したカルモナたちは路上のモーテルに立てこもる。ワンシチュエーション化することでテンポが停滞気味に感じられる部分もあるが、これは実際の報道記録や現場のリアリティラインを重視した結果だろう。あえて物理的な動きを止め、買収の誘惑と報復の恐怖が入り乱れる心理戦へと焦点を絞っている。

 

 警察内部の誰にエル・チャポの息がかかっているか分からない以上、安易に応援を呼ぶこともできない。この孤立無援の状況こそが、メキシコにおける麻薬汚染の深刻さを残酷なまでに浮き彫りにする。

 

 エル・チャポは巨額の金で二人を誘惑するが、彼らは屈しない。カルモナには「目の前で一般人が犠牲になったトラウマ」があり、相棒のロサレスも長年の勤務で「エル・チャポのような人間の残忍さ」を嫌というほど見てきたからだ。

 

 二人の絆を補強する演出も見逃せない。お互いが差し出したコーヒーを飲む描写は、いわゆる「フード理論(食べ物や飲み物を共にする演出で信頼関係を表す手法)」の美しい実践だ。最初は衝突しかけた二人が、「バディの法則」通りに確かな信頼関係を築いていくプロセスには強い説得力がある。

 

 実話をベースに「警察官が金の誘惑を跳ね除けて職務を全うする」構図は、同じくNetflix映画の『Rip』にも通じるテーマ性を持っている。

www.dustnddirt.com

ラストシーンが示す「メキシコの自浄能力」

 応援が駆け付け、エル・チャポの身柄は無事に引き渡される。ここで印象的なのが、海兵隊がエル・チャポを回収しようとする際、警察署長が「自分たちが逮捕したのだから最後まで付き合う」と主張するシーンだ。

 

 単なる管轄争いにも見えるが、これは「メキシコ人が自らの手で巨大な悪を捕まえた」という証であり、腐敗したシステムを自らの手で乗り越えてみせるという社会の自浄能力の提示だと捉えると深く合点がいった。

 

 エンドロール前にはカルモナ、ロサレス、そしてエル・チャポのその後がナレーションで語られ、約90分の物語は静かに幕を閉じる。

 

 メキシコを舞台にした映像作品というと、どうしても「麻薬カルテルと暴力」というテンプレ化された暗い側面にスポットが当たりがちだ。しかし、巨額の賄賂を拒絶し、家族と誇りのために命を懸けたこの二人こそ、ステレオタイプな闇の裏側に確実に存在する「メキシコの光(希望)」そのものだったのではないだろうか。実録物ゆえの脚色上の不自然さは一部あるものの、非常にテンポ良く見応えのあるサスペンス作だった。

 

 エル・チャポことホアキン・グスマンだけど、私は本作で初めて彼の存在を知ったのですが、かなりの有名人らしく、ネットフリックスの映像作品では本作の他に2作品ほどあるのでそちらも紹介してこの記事の終わりとします。

 

 まずはドラマ「エル・チャポ」

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 ドキュメンタリー「エル・チャポと出会った日」

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